上橋菜穂子さん、夢の守り人
守り人シリーズの3作目、夢の守り人。
これは大河ドラマにはなかったお話でしたね。新鮮な気持ちで読めました。
この本で心に残ったエピソードは
1.呪術師トロガイの過去
2.バルサとタンダの深い絆、愛
3.ジグロから受けた愛を言葉にしたバルサ
1.トロガイの過去
ドラマではトロガイの過去は全く描かれてなかったけど、トロガイはもともとトムカという名前で、ヤクーの村に住んでいた普通の女の子だったんですね。
それに三人の子供もいてお母さんだった。
子供たちはみんな幼いうちに亡くなってしまったけど、母であり、妻であった時があった。
そして、ナユグで産んだ息子もいて、それが今回の話につながるんですね。
子供を亡くした哀しみを越えることができず、夫の元にも帰らずに呪術師になることを選んだ。
過去を知ることでトロガイの存在が近くに感じられました。
2.バルサとタンダの深い絆
タンダが魂をとられ、体を乗っ取られ、獣のようになってしまう。
獣と化したタンダがバルサ達を襲ってくる。
タンダを傷つけたくなくて短槍を使わずに闘ったバルサに対して、今度闘う時は短槍を使うようにとトロガイが言う。
それに対してバルサは、
「あいつを殺すくらいなら、あいつに、この首をくれてやるよ。」
「あいつを止めるために全力を尽くす。だけど、あいつを殺さねばならない、ぎりぎりの瞬間がきたら、わたしはあいつに殺される方を選ぶ。」
なんの迷いもないバルサの言葉。
本当にタンダのことが大事なんですね~。
この人のためなら迷いなく死ねる。
そんな人がいることが幸せですね。
自分よりも大切な人がいることで、人は生きていけるんだなぁ。
3.ジグロから受けた愛を言葉にしたバルサ
バルサは、ジグロに償えない借りがあると思っていた。それがとんでもない間違いだと気づくのに長いことかかったと話す場面。
「あれほど思いをかけてくれたことを、わたしは、信じられぬほどの幸せだったと思って生きるべきだったんだ。好きな者を守って生きることは、よろこびもあるんだから。あんな人生だったけど、ジグロにも、そんな喜びがあったと思いたい。
チャグムを守っていたとき、わたしは幸せだった。他人のチャグムのために、死ぬかもしれない危険な戦いをしたけど、それでも······幸せだったんだよ」
チャグムを愛することで、親の気持ちを知ったバルサだったんですね~。
親が子を愛するのは、苦労もあるし喜びもある。
愛を受けるだけだと、愛を与える側の気持ちはわからないものです。
人を愛することで、愛を受けたことを知ったバルサ。
親の気持ちがわかると、見える世界が変わります。子供から見える世界って、ほんとに狭い。
誰かを愛することで、得られるものは大きい。それは恋愛とは別の無条件の愛。
愛する喜びが、愛を受ける喜びよりも大きいと知った時、人生が変わるものです。
バルサがジグロの気持ちを知り、自分は幸せだったんだと気づけて良かった。
ファンタジーでありながらも、現実的な人間の感情に触れますね。
少し成長したチャグムとバルサの再会、トーヤとサヤが結婚して、なんでも屋をやってることもうれしい内容でした。
次の作品も楽しみです。