上橋菜穂子さん、闇の守り人
大河ドラマを観てから読んだので、ドラマと原作の違いに驚くところがありました。
ドラマの中では、最終章にバルサが故郷のカンバル王国に行き、過去に向き合うお話があります。
原作では二冊目の闇の守り人でカンバルに行くんですね。チャグムが一緒ではなく、バルサが一人で行きます。
ドラマの最終章では、槍舞いの回が大好きだったので、原作ではこの本に書かれているのだとわかり夢中で読みました。
親友カルナに頼まれて、カルナの6歳の娘バルサと共にカンバル王国から逃れたジグロ。
かつて友であった追手を次々に殺さなくてはならなかったジグロの思い。
バルサさえいなければ、国を捨て友を殺すこともなかったという恨み。
そんな恨みがあったことを、バルサは心のどこかで気づいていた。
6歳だった自分に何ができたというのか、バルサも自分の怒りに気づく。
哀しみや苦しみを抱えながらも、それでもジグロはずっとバルサを愛してきた。
心の葛藤と常に戦いながらも、それでもバルサと共に生きることを選んだジグロの気持ちって、どうだったんだろうか。
ドラマでは、槍舞いでジグロがバルサに槍でつかれるが、原作ではバルサがジグロに槍でつかれるところが全く違う点ですね。
原作の中では感じなかったのですが、ドラマを見ていて感じたジグロの大きな心の葛藤は、友を殺したということではなく、カンバルという母国のために生きることができなかったという無念さです。
個人的な恨みや悲しみというよりも、国王を支え国を守るという大きな志を果たせなかったことを一番無念に思っているようでした。
そして、愛する人、ユーカを置いて国を出たことも。
ここも原作と大きく異なるところですね。より、ジグロの心の葛藤がいかに大きかったかを考えざるを得ません。
バルサを置いて国に帰ろうと何度も何度も悩んだだろう。
それでもバルサを愛する生き方を選んだ。
それはきっと、父と娘という親子の愛が理屈抜きにそうさせたのかもしれない。
人生、頭で考えて正しい答えを出せるものじゃないなぁと思います。
正しい答えって、たくさんある。
自分が出した答えが答えになる。
大人になってから読む物語って、深いもんだなぁと感じました。