上橋菜穂子さん、虚空の旅人
シリーズ四作目、虚空の旅人。
今回はチャグムが主人公で、星読みのシュガと力を合わせて困難を乗り越えていく内容でした。
チャグムは自国の南にある、サンガル王国の新しい国王の即位式に招待される。
サンガルは島々が集まった国。
サンガル王の娘である王女たちが、島を治めている島守りと結婚することで王家と島の繋がりを保っていた。
今回面白かったのは、筆者があとがきで書かれているように、多くの異なる民族、異なる立場にある人々が、それぞれの世界観や価値観をもって暮らす世界が描かれていることです。
まさに、現在の世界情勢に通じる内容がだったと思います。
それぞれの立場での感じ方、善悪の判断、大切にしているもの。
当たり前だけど、それぞれ違うからこそ、争いが起こる。
世界が平和になるのは簡単ではないと感じます。
国同士の政治的な駆け引きをとってみても、理論的で無情な人がいれば、人情に厚い人もいる。
いろんなタイプの人がいるからこそ、お互いが支え合えばうまくいくだろうけど、自分だけが正しいと主張すると、争いが起きるものです。
サンガル王国より南にある、タルシュ帝国と手を組んだ島守り達が王家に反乱していくことが物語の始まり。
サンガルに仕えるよりもタルシュに仕えた方が利益があると判断したのが理由の一つ。
しかし、それが大きな要因ではないと思いました。
反乱の首謀者である島守りのアドルは、王様の長女カリーナと結婚していました。
結婚してもうかなり経つのに、ふたりのあいだには決して埋められない隙間があいていた。
ふしぎだった。あれほどに賢い女なのに、なぜ、気づかないのだろう。こういう隙間を作るのことが、王国にとっていかに危険かということに。夫よりサンガル王国を大切にすることで、失っているものがあることに、どうして気づかないのだろう。
国家への反乱という大きな出来事ではあるけれど、一番の要因は夫婦の不仲だったわけです。
タルシュが大きな帝国でそちらにつく方が利益があるとしても、愛する妻であれば運命を共にしたいと思ったはず。
国家の危機も夫婦の危機から始まる。
平和は、夫婦の愛から始まる!
今回一番学べたことはこれですね。
チャグムとシュガの命懸けの魂の戦いも見ものでした。
チャグムがこうして成長していく姿は、ドラマでは見れなかったのでうれしいです。
人の上に立つ人は、清らかな心を持って知恵深くあることが大事ですね。
自分の思いを優先する以上に国を愛し、また一人の人を愛する心が必要だなと感じました。